常設展
アジアを身にまとう-織物の交流と想像
織物、それは繊維から作られ、衣服を縫製するための重要な材料です。工業革命以前、針仕事は家庭内で普通に行われていたものでしたが、今では自分で裁縫をすることもなくなり、織物は最も身近な存在から遠い素材となってしまっています。古代のアジアにおけるの布地は、その紡織や染織の違い、または装飾文様などの特徴により、それぞれに秘められた文化や宗教、性別、さらには職業などの情報を読み解くことができます。殊に興味深いのは、時空や地域を超えた美しさへの感性――古代の流行の広まり方は、私たちの想像を超えてはるかに早いものでした。魅力的な事物には誰もがこぞって追随するということなのでしょう。中国は光沢の美しいシルクで名を馳せ、金の如く貴重なものとされただけでなく、絹織物は東アジア文明の象徴ともなりました。また、南アジアのインドでは、綿布に模様染めを施した世界に冠たる更紗(さらさ)を生み出し、世界の人々を魅了して止まず、世界的な綿紡織革命をも促しました。地域を超えた織物の旋風がもたらしたのは、商機はもちろん、それ以上に文化の影響力でした。インド洋から太平洋にかけて島々が綿々と数千キロも連なるインドネシアでは、四方八方から伝わった異国の文化が交わり、流転し、そして時機がやってくると、再び他地域へと伝播されていきました。 本展覧は、当博物院が所蔵する中国、日本などの東アジア文化圏、およびインドやインドネシアなどの南アジア、東南アジア文化圏の織物や服飾を中心に、「千絲-東アジア 超絶の織物技術」、「躍動-南アジア・東南アジア 華やかな模様染め」、「流転-装飾工芸の地域を超えた伝播と影響」を三大テーマに、各文化圏の織物と服飾の特色をご紹介するとともに、貿易にともなう織物の地域を超えた交流と想像について掘り下げていきます。また、教育促進エリアでは「華布-アジアの織物に見られる装飾技法」を開催し、織物の技法についてわかりやすくご紹介します。